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2011年3月18日 (金)

原発を理解する 第2回【ウランと核分裂連鎖反応 No.3】

3月18日(金) ■ 原発を理解する 第2回【ウランと核分裂連鎖反応 No.3】 ■
No.2のつづき。

前回は、
臨界(核分裂の連鎖反応)にいかにもって行くかということを書いた。
もし原子爆弾を作るのであればまあだいたいこの原理さえ抑えておけばよいのだが、
原発ではこれだけでは不十分である。
連鎖反応では核分裂がどんどんねずみ算式に増えていくわけなので、
このままでは暴走して爆発してしまうのである。
それを抑える仕組みが必要となる。

この仕組みは意外とシンプルで、
「中性子をコントロールする」というのがポイントになる。
早い話が中性子をウラン235に吸収させないようにしちゃえばよいのである。
考えられる方略は以下の2つ。
(1)中性子をウランに渡す前に吸収してしまう
(2)中性子の速度の吸収をやめる

(1)は実にわかりやすい。
ホウ素とかカドミウムという物質は中性子をよく吸収する。
そこでこいつらをばら撒いてやれば中性子はこいつらに吸収されてしまい、
ウラン235にはわたらなくなる。
今回の事故で海水注入のときホウ素をばら撒いていたのにはそういう理由がある。
実はこの方法は通常発電時にも使われている。
今回の報道でよく耳にした「制御棒」という部品がそれで、
コイツは中性子吸着剤でできている。
制御棒は複数あって、
連鎖反応が起こりすぎたら制御棒をいくつか入れて反応を抑え、
出力が下がったらこれを抜いて反応を促す。
こうやって安定した出力を得ることができる。
緊急時にはこの制御棒を全部入れてしまうことで、
中性子の吸着を最大化して核分裂の連鎖反応を止めるのだ。

チェルノブイリでは緊急事態が起こったときにこの制御棒の挿入がうまくいかず暴発してしまった。
今回の福島原発では制御棒の全挿入はうまくいっているので、
そういう意味ではチェルノブイリとは同じ事象にはなり得ないというわけ。
チェルノブイリのことはまたいずれ。

(2)は実用面ではあまり役に立たないが、
緊急時には安全装置になりうる。
福島原発の型の原発では一次冷却水と呼ばれる、
発電と冷却に使われる水が使われているが、
コイツは中性子の速度抑制剤の役割も果たしている。
今回のように水が不足して空焚きのようなことになった場合は、
冷却効果もなくなる代わりに中性子の速度抑制剤の効果もなくなるので、
ウラン235の中性子吸着が少なくなり、
結果核分裂反応も通常状態よりは抑制されることになる。



第3回【原発での実装】
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ポリシーはこっち

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2011/03/18 0:53
やや疲れた。
in福井city

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