原発を理解する

2011年3月27日 (日)

原発を理解する 第11回【ナカジメ】

3月27日(日) ■ 原発を理解する 第11回【ナカジメ】 ■
前回はこっち。

長らくこのシリーズを続けてきたが。
もうだいたい書きたいことは書いたのでここでナカジメ。
これからも、
チェルノブイリのこととか、プルトニウムのこと、
原発を学んで思ったことなんかを書いていこうと思っているが、
それは単発でおいおいアップして行く予定。


第12回(作成中)
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2011/03/27 11:14
やや疲れた。
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2011年3月26日 (土)

原発を理解する 第10回【福島原発事故の今後の想定シナリオと展望】No.2

3月26日(土) ■ 原発を理解する 第10回【福島原発事故の今後の想定シナリオと展望】No.2 ■
前回書いたのは現状から考えられる一番かたいストーリ。
現在はまだ冷却水うんぬんのことをやっているので、
まだ中身がどうなっているのか、どこどこが壊れて、どの辺が危険なのかがわかっていない。
今日は前回よりは少し枠を広げて可能性のあるものをいくつか挙げてみる。
これまでに起こった事故事象はasahi.comにわかりやすい図が載っていたのでリンクを張っておく。

(1)炉心溶融(メルトダウン)と容器の破損
一番怖いのがコイツ。
通常燃料棒というのは水(冷却水)に入っており、
周りの水が絶えず燃料棒の熱を冷ましている。
が、今回はこの水が蒸発してしまった。
このため燃料棒の表面温度が上昇してしまい、
燃料棒のケースが高温で水蒸気と反応、
水素が発生した。
そういうわけなので、当然燃料棒のケースはいくらか壊れたはずなのだが、
もし燃料棒の温度がさらに上がり続けると困ったことが起こる。
ケースではなく燃料そのものが解けてしまう温度になってしまうのだ。

燃料棒が解けるということは、
より多くの放射性燃えカスがでてきやすくなる。
また、ものすごい熱を持ったものが解けて壊れるので、
燃料棒の外側の圧力容器(燃料棒のひとつ外側のケース)や格納容器(圧力容器のひとつ外側のケース)を壊しかねない。
前にも話したとおりこいつらは放射性物質の漏洩防止の役割を持つ。
当然こいつらが壊れればそれだけ放射性燃えカスが漏れるということを意味する。
2号炉ではある時点で圧力の高かった格納容器の圧力が急に下がっており、
容器になんらかの破損が起こったことが考えられる。
炉心溶融との関係が非常に気になるところなのだ。

もし炉心溶融が起きてなかったとしても、
圧力容器とか格納容器が壊れている可能性は当然ある。
その程度がどんなものなのか、
それによって今後の事態も大きく変わってくると思う。

(2)塩害
今回の事象では津波や冷却のため、
原発施設はたくさんの海水をかぶっている。
当然復旧にしたがってこいつらがいくらか邪魔してくると思う。
それを考えてか、
そろそろ真水に切り替えるみたいだが、
スムーズに切り替えることができるのか、
影響がどの程度出てくるのか注視したい。

(3)使用済み核燃料とプール
メディアではあまり大きく扱われていないが、
オレは一番コイツを心配している。
なぜかといえば、
コイツは放射線漏れ対策の容器(格納容器や圧力容器)に入っていないのだ。
どういうことか。

使い終わったあとの燃料棒は前にも書いたとおり短半減期の放射性燃えカス達がたくさん詰まっている。
こいつらは放射線と熱を出しまくっている。
なのでとりあえず、この短半減期の連中が少なくなるまでしばらく冷やして、
それから後始末をするという手続きがとられるのだ。
熱をとるために水の中に沈め、
水を循環させて熱をとりながら気長に待つ。
この熱をとる施設が使用済み核燃料のプールというヤツ。
原子炉建屋の上のほうの階に設置されている。
が、このプールの水の循環器系が停電で死んでしまい、
気付いたら水位が下がって燃料棒が露出し温度が上昇。
燃料棒ケースが破損した可能性があるのだ。

点検中で止まっていた4号炉から火が出たのそのせい。
3号炉の使用済み核燃料も破損の可能性あり、
1,2号炉は不明という状況。

この使用済み核燃料に関しては、
放射能漏れを防止する唯一の安全設備が建屋になるのだが、
今回は2号炉以外、すでに建屋がなくなっている。
もしコイツらから漏れ出でている(もしくは漏れ出す)ような事態になれば、
被害は相当深刻なものになると思っている。
間近で報道されている高濃度の放射線を含んだ水は、
こいつら由来ではないかと考えてさえいる。

なんでこんな危険なものが、
こんなちゃっちいシステムで保管されていたのか、
この辺にかなり違和感を持つところなのだが、
文句をつけるのは危機が落ち着いてから、と考えているので、
今回は書かない。


第11回【ナカジメ】
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2011/03/26 0:48
やや疲れた。
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2011年3月25日 (金)

原発を理解する 第10回【福島原発事故の今後の想定シナリオと展望】No.1

3月25日(金) ■ 原発を理解する 第10回【福島原発事故の今後の想定シナリオと展望】No.1 ■
前回までにもう書きたいことはだいたい書いてしまった。
あとはチェルノブイリのこととプルトニウムの毒性のことを書きたいと思っているが、
これは今本を読んでいるところなのでちょっと時間がかかる。
なのでそいつらは後回しして、
今回は勉強してきたことと現状を踏まえて「今後どうなるのか」について考えてみたい。
そんなに外れているとは思わないが、
あくまでオレの私見であることは頭に置いて読んでいただきたい。

福島原発は放水で一時期に比べるとずいぶん落ち着いた。
が、オレはむしろこれからが重要だと思っている。
おそらく今回の事故で燃料棒のケースは破損している。
水を激しくまいて水位を戻すという一連の対応は、
この燃料棒のケースを修復することや放射能漏れをなくすことを目的としたものではない。
いったん破損したケースは勝手に修復することはないので、
あくまでこの破損をこれ以上広げないようにするための措置である。
なので今後はこの燃料棒ケースからの漏れをどう防ぐかが課題になってくる。

じゃあどうやってケースを修復する?と考える人もいるかとは思うが、
おそらくこの破損を修復するのは無理。
どの程度の破損かは不明だが、
燃料棒から漏れている放射性物質は、
何重かのシールドをくぐりぬけてきたごく一部であることが考えられるので、
燃料棒を直接どうこうするのは放射能レベルが高すぎるハズなのだ。
危険極まりない行為なのでまずないと思う。
すると考えられる措置としては、
まず安定的な状態を保てるように装置をセットアップする。
例えば冷却系とかモニタリング計器なんかを整備する。
その上で建物ごと何らかの方法でシールドをし、
短半減期の連中が少なくなるのを待ってから、
燃料棒の撤去という流れになると思う。

スリーマイル島の原発事故では、
事故後燃料棒の取り出し開始までに5年、
終了までに10年かかっている。

ちょっと中途半端になってしまったが、
もう時間が遅いのでまた次回。


第10回【福島原発事故の今後の想定シナリオと展望】No.2
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2011/03/25 0:41
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2011年3月23日 (水)

原発を理解する 第9回【外部被爆と2種類の内部被爆】

3月21日(月) ■ 原発を理解する 第9回【外部被爆と2種類の内部被爆】 ■
前回までにベクレルやらシーベルトのハナシをした。
今回は体への影響を考えてみようと思う。

体への影響を考えた場合、
以下の要素が重要になる。
(1)半減期とベクレル
(2)どういう種類の被爆か(外部被爆とか内部被爆とか)
(3)どういう化学的性質を持った物質か

(1)は放射能の強さとその持続時間を示しているので重要なのはわかっていただけると思う。
半減期が長いほど影響が長く続き、
ベクレルが高いほど瞬時に浴びる放射線量が高くなる。
そして前にも書いたとおり半減期とベクレルは反比例的な関係で、
半減期が長ければベクレルは小さくなる傾向がある。

(2)は報道でご存知の方も多いと思う。
実はベクレルからシーベルトに換算するとき、
この被爆の種類によって換算値が変わってくる。
外部被爆とは体の外から放射線を浴びることで、
同じベクレルであれば一番小さな放射線量(シーベルト)に換算される。
対して内部被爆はご存知体の内部に取り込まれた形で被爆すること。
長期間比較的組織に近い位置から被爆するため、
ベクレル→シーベルト換算値は外部被爆に比べて高めの値を出す。
例えばセシウム137(半減期)の場合で見てみると、
1mの距離に100万ベクレルの放射線源があると、
0.0019ミリシーベルトの放射線量になるのに対して、
内部被爆の場合は1万ベクレルの摂取で1.3~0.67ミリシーベルトだから、
その差は歴然。

さて、内部被爆に関して。
実は内部被爆はさらに2種類に分けることができる。
それは経口摂取か吸入摂取の違い。
これはその物質の化学的性質によって異なるようで、
例えば先述のセシウム137は経口のほうが吸収が多いらしく、
1万ベクレルの摂取で1.3ミリシーベルト換算。
吸入では0.67ミリシーベルトと半分くらいの値になる。
ちなみにプルトニウム239を不溶性酸化物という形で1万ベクレル摂取した場合、
吸入で83ミリシーベルト、経口で0.090ミリシーベルトだからずいぶん変わる。

(3)はその物質の体内での動き方を考える上で重要。
なんでセシウムとかヨウ素が問題にされるかといえば、
この化学的性質のせいなのだ。
ヨウ素は甲状腺にたまりやすく、ここで高濃度になる。
ストロンチウムはカルシウムに似た動きをするし、
セシウムはカリウムと同じような動きをする。
このせいで体の中で物質ごとにそれぞれ特徴的な動きをする。
これらは体が必要とする物質なわけだから、
当然取り込まれやすいという性質もあわせもつわけ。

ただ、報道されている規制値というやつは、
当然こんな性質は勘定済みで設定されているハズなので、
規制値以下であれば心配する必要はないと思う。

ちなみに参考までに。
一般に子どものほうが放射線にシビアとされている。
WHOの規制値の表を眺めてみると、
大人と乳児でベクレルのガイドライン値に差がついている物質とそうでないものがあり、
ヨウ素、セシウムに関しては子どもと大人で同じ値をガイドラインの値として載せている。
ただ上記ガイドラインは英語でざっとしか読んでないので、
参考程度に聞き流していただければと思う。
そのうちちゃんと読みます。


第10回【福島原発事故の今後の想定シナリオと展望】No.1
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2011/03/23 23:43
やや疲れた。
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原発を理解する 第8回【ベクレルとシーベルトその2~シーベルトの求め方】

3月21日(月) ■ 原発を理解する 第8回【ベクレルとシーベルトその2~シーベルトの求め方】 ■
前回この単位に関する質問が多数でた。
なので、少しだけ補足を。

放射線量(シーベルト)は様々な放射線物質から出ているものの総量だと書いた。
前回は触れなかったが、
実はこの「放射線量(シーベルト)」というのは、体への影響が加味されたもののことを言っている。

ご存知の通り放射線にはいろいろな種類がある。
α線、β線、γ線、中性子線など実にたくさんのものがある。
こいつらはそれぞれ性質が異なっていて、
当然ながらその作用も異なる。
そういうわけだからこれらの放射線の量を単純に足し算してもあまり意味はない。
というか、量がいかなるものかという定義がないので足し算そのものができない。
そこで放射線量(シーベルト)では「体への影響」ということに特化した値としてあらわされている。

基本的に「体に影響がある」=「体にエネルギーが吸収された」と考えていい。
なので、
放射線量(シーベルト)=α線の出したエネルギー×α線の生体に及ぼす影響係数+β線の出したエネルギー×β線の生体に及ぼす影響係数+…
という風にして求めることができる(※実際にはもう少し複雑な式で組織ごとの影響の違いまで補正している)。
影響係数は実験的に固有値が求まっているので、
あとは計測器で各放射線エネルギーがどれくらいあるかを求めてあげればシーベルトが求まることになる。

まあそういうわけだから、
放射線量(シーベルト)で示された値というのは、
同じ値であれば原発由来のものだろうが、ジェット機で移動中に浴びるものだろうが、
生体への効果は同じ、と考えることができるのだ。

ちなみに全放射性物質のベクレルがわかっていれば、
その時の放射線量(シーベルト)は求まりそうだが、
全放射性物質を計測することが難しいせいか、
そういった変換の方法は調べても出てこなかった。
その逆(シーベルトからベクレルを求める)は、逆問題(方程式で2つしか式がないのに未知数が3つ以上あるような問題)になるので理論的に変換不可能。


第9回【外部被爆と2種類の内部被爆】
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2011/03/23 0:47
ねみぃ。
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2011年3月21日 (月)

原発を理解する 第7回【ベクレルとシーベルト~現在の放射線量のレベルは持続しうるのか?】

3月21日(月) ■ 原発を理解する 第7回【ベクレルとシーベルト~現在の放射線量のレベルは持続しうるのか?】 ■
前回半減期のハナシをしたので、
もう少し半減期絡みのハナシを。

各地で通常時よりは高い放射線量(シーベルト)が報告されている。
同時に放射性物質であるセシウム134・137、ヨウ素131などの検出も報告されている。
セシウム134といえば半減期が2年で、セシウム137は30年くらい。
半減期が長いということはその分放射線を出す期間が長くなる。
ということは、長い半減期のセシウムとかがいる限り、
この高い放射線量はしばーらく続くのではないか?という不安が出てきてしまう。
現在の放射線量×1年にすると結構やばい数字になってしまうし、
最悪しばらく住めなくなってしまうんじゃないかという論にも発展する。
が、この論には少し落とし穴がある。

今回検出が報告されている放射線については、
実はどの物質由来なのかというのはあまり言われてないと思う。
これがセシウム由来だとすれば、
上の不安論が正しくなると思うのだが、
実際には違う物質由来のものが大多数だと思う。
どういうことか。

前回の半減期のハナシでも書いた通り、
放射線というのはその物質がぶっ壊れて別の物質に変化するときに発生する。
半減期がはそのぶっ壊れるまでの時間を示すことにもなるから、
半減期が長いものというのは放射線をあんまり出さない(放射能が低い)。
逆に半減期が短いやつほどどかどかぶっ壊れて放射線を出す(放射能が高い)。
で、現在は事故から10日以内なわけなので、
相対的に短半減期の放射性物質由来の放射線の割合がかなり大きいはずなのだ。

こういう混乱を防ぐために、
半減期を勘案した放射能の強さを「1秒間に崩壊する原子核の数」で定義して、
ベクレル(記号:Bq)という単位を使って放射能の強さを物質ごとにあらわし、
物質ごとの影響の議論をするときにはこっちを使う。

せっかくシーベルトという言葉を覚えたところで、
水道水とか野菜の報道で「ベクレル」という新しい言葉が出てきて混乱した方も多いとは思うが、
これらの報道でベクレルの値が使われているのにはそういう理由がある。
放射線量(シーベルト)はすべての放射性物質からでる放射線の量がごっちゃになっているので注意が必要なのだ。
セシウム137とかヨウ素133ばかり報道されているから、
こいつらが放射線量(シーベルト)の主犯のような気がするけど、実はそうではないわけ。

手元の資料では、
発電炉停止直後に放射能が強いのは、キセノン133(半減期5日くらい)、ヨウ素131(半減期8日くらい)、ストロンチウム89(半減期51日くらい)らへん。
しかもキセノン133なんかは気体だから漏れやすいらしい。
放射能の強さ(ベクレル)はセシウム134でキセノンの100分の1、セシウム137で30分の1だから、
今の状態の放射線量(シーベルト)がセシウムを強く反映している気はあまりしない。

チェルノブイリとか原爆のハナシとかで、
長半減期の放射性物質(燃えカス)の及ぼす長期的な影響が気になるところだが、
現在の状態ではまだそこまで深刻な事態には至っていないというのがオレの印象。
今ぼんぼん放射線を出している短半減期の連中は、
かなり早い段階でなくなってしまうし、
長半減期の連中だって少しずつ放射能の強さは弱まっていく。
1年間今と同じ強さの放射線量(シーベルト)の放出が続くとは考えらず、
今の放射線量(シーベルト/h)×1年分という計算方法は正しい気がしないのだ。

ただ、落ち着いたとはいえ放射性物質の漏れはまだ続いているはずだし、
今後の復旧作業によって新たな漏れが出てこないとも限らないので、
これからの状況次第で展望が変わることはありうる。
今後の状況は、今の危機状態を早く安定状態にもっていき、
漏れ状態をどれだけ早く解消できるかが鍵だと思っている。


原第8回【ベクレルとシーベルトその2~シーベルトの求め方】
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2011/03/21 19:58
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2011年3月20日 (日)

原発を理解する 第6回【半減期と放射線~なんで使用済み核燃料から熱が出るのか?】

3月20日(日) ■ 原発を理解する 第6回【半減期と放射線~なんで使用済み核燃料から熱が出るのか?】 ■
前回はこっち。

ツイッター経由でこんな質問をいただいた。
「質問です!もしも書いてあったら理解できてなくてごめんなさいなんですが、燃料棒の熱を完全に冷ましきる方法はないんでしょうか?ウランはずっと熱を発し続けるんですか?」

そろそろこのハナシをしようと思っていたので、
今回はこのハナシをば。

ニュースを見ていて、なんで止まっているはずの4号炉の使用済み核燃料が熱を持つのか、
不思議に思った人も多いのではないだろうか。
このハナシを理解するためには、
まず放射性物質の半減期とエネルギー放出について理解しておかなければならない。

まず半減期。
テレビなんかではずいぶん出てきているので、
ご存知の方も多いかもしれないが、
放射性物質というのはその種類によって「半減期」というものを持っている。
放射性物質というのは原子核が不安定でなんらかの変化を起こす物質のことであるので、
時間がたつと物質そのものが別の物質へと変わってしまう。
そして半減期とは、その物質が半分になるまでの時間をさす。
物質によって異なっていて、
テレビでおなじみの物質たちは以下の通り。
ヨウ素131:8日くらい
セシウム134: 2年
セシウム137:30年
ちなみにプルトニウム239は24390年で、ウラン235は7億年だから、
燃えカス軍団と比べると桁違い。

半減期が短いとよくて長いとやっかいなような印象を受けるが、
実はそうでもない。
その理由は放射性物質のエネルギー放出がどうやって起こっているかに関係している。
放射性物質はその物質が他の物質に変わる瞬間(これを崩壊という)に放射線を出す。
この放射線≒エネルギー放出なのである。
つまり半減期の短いものはぽんぽん崩壊しながら放射線を出しまくっているわけだから、
仮にもし同じどの物質も同じ大きさを出すものとすれば、
半減期の短いものほど時間当たりの放出エネルギーは大きいことになる。
ただ、放出するエネルギーの大きさは、
その物質の起こす変化に依存するので一概に言えないが。

燃えカス(放射性物質)が出来上がった直後というのは、
こういう短い半減期のものがたくさん存在しており、
こいつらがどんどん熱を出す。
これはウランの核分裂連鎖反応を止めたとしても関係なく続くので、
炉を止めたあとしばらくは熱を出し続けるというわけ。
今回の緊急停止で止まったはずの炉心がいつまでも熱を持ち続けている理由や、
停止中の炉の使用済み核燃料が熱を持っていたのはこのせい。
ちなみにこの熱は一定期間たつと短半減期の放射性物質が少なくなるせいで小さくなる。

核燃料から熱が出ているとなんだかウランが悪さしている気がしてこわくなるが、
以上のようにウランはあまり関係ない。


【ベクレルとシーベルト~現在の放射線量のレベルは持続しうるのか?】
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2011/03/20 21:24
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原発を理解する 第5回【対放射性燃えカス安全構造】

3月20日(日) ■ 原発を理解する 第5回【対放射性燃えカス安全構造】 ■
前回の続き。

ここまで読まれた方は、
原発の安全性においては、
放射性物質である「燃えカス」をいかに外部に出さないかが、
かなり重要であることはわかっていただけたと思う。

そんな重要なポイントであるので、
当然設計段階で何重にも対策がされている。
福島原発の型の原発では5重の防護壁がある。

(1)燃料ペレット
原発を理解する 第3回【原発での実装】の回で書いた、
燃料棒に詰める前の、燃料を焼き固めた小さな錠剤がこれにあたる。
大部分の燃えカスを内部に保持する能力を持っている。

(2)燃料被覆管
例の燃料棒のケースのこと。
内部に密封することで漏洩を防ぐ

(3)原子炉圧力容器
炉心を納めた容器。
燃料棒、制御棒、一次冷却水とその蒸気などが中に入っている。
(2)が壊れてもこの中に内包させ、外部への漏洩を防ぐ。

(4)原子炉格納容器
ニュースでおなじみになったあいつ。
原子炉圧力容器と一次冷却水系の配管などを収納している。
原子炉から放射性物質が放出された場合に燃えカスを閉じ込めておくことができる。

(5)原子炉建屋
格納容器の外側にあり、敷地外への漏洩を防ぐ。
今回爆発で壊れてしまったやつ。

このように5重の防護壁があり、
1つがだめになっても容易には外に漏れないようになっている。
前回の記事で、
「燃料棒の破損=外部への放射性物質(燃えカス)ばらまき、
と、単純に言い切ることはできない。」
と書いたのはこういう理由。
ちなみに今回の福島原発の場合は、
(5)が壊れ、
(2)に損傷の可能性、
(1)は未知数、
(4)は一部気体の排出のため通気
といったところか。
ゆえにほんの一部がもれていると考えるのが妥当。
ただし4号炉の使用済み核燃料については、
燃料棒が炉に入っていないため(3)~(4)がない状態なことに注意。

ちなみにチェルノブイリは(4)がない構造。
ほぼ核爆発に近い事故で(2)(3)(5)は完全にアウト。
ほとんどの燃えカスがばら撒かれてしまったらしいのだ。
そういう意味でもやはり今回の福島原発とは次元の違う事故だと思う。


第6回【半減期と放射線~なんで使用済み核燃料から熱が出るのか?】
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2011/03/20 0:26
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2011年3月19日 (土)

原発を理解する 第4回【燃料棒のケースと水素爆発】

3月19日(土) ■ 原発を理解する 第4回【燃料棒のケースと水素爆発】 ■
前回、燃料棒のハナシをした。
実はこの燃料棒の容器(ケース、正式には「被覆材」という)が、実は今回の福島原発の爆発と危険性を考える上でキーとなる。

ウランは燃える(核分裂する)と燃えカスを生むことは以前書いた。
この燃えカスが強い放射能を持っていることも書いた。
すると燃料棒のケースには「燃えカス閉じ込め機能」が求められることになる。
しかし燃料棒のある炉心は非常に苛酷な環境。
そのためケースには以下の特性が求められることになる。
(1)高温でもへーき
(2)強い放射線下でもへっちゃら
(3)腐食しにくい(冷却材と常に接触しているため)
以上対環境からの要求
(4)中性子を吸収しない
(5)熱伝導がよい
以上は発電上の理由から
(6)経済性がある
実用上の理由から

こんな厳しい要求を満たす物質となると限られており、
多くの原発同様、福島原発ではジルコニウムという物質の合金であるジルカロイという物質が使われている。
そしてコイツが曲者なのだ。
ジルカロイはあまり強い金属ではないのだ。
特に高温状態では水蒸気と反応して水素を発生する。
通常時は全部水に浸かっている上、
表面温度も300℃くらいなのでへっちゃらなのだが、
今回のように冷却材が切れてしまうととたんに大変なことになる。
冷却材は水蒸気になっている上、冷却効果はなくなっている。
どんどん水蒸気と反応して水素を発生させる。
1000℃を越すと反応は目立って速くなり、
1500℃では10分でぼろぼろに。
融点は1900℃で、
この温度になると反応は爆発的に起こるらしい。

今回の福島原発の事故で、
水位低下とか空焚きとかを問題にしていたのはこのせい。
建物(建屋)が吹っ飛ぶ爆発を起こしたのも、
このジルコニウムと水蒸気によって発生した水素が原因といわれている。
原発で爆発というとどうしてもウランが悪さをした原子力エネルギーによるものを想像しがちだが、
今回の爆発はいずれもこの燃料棒のケースのせい。

水素が発生したということは、
ケースが破損した可能性があることを意味する。
ケースが破損すれば破損の規模が大きければ大きいほど、
その分だけ例の放射性燃えカスが燃料棒外に出てくることになる。
このケース破損を最小限に防ごうとしていたのが一連の放水活動。
原理上一度破損したケースはもとには戻らないので、
温度や水位が安定した後でもそのことは頭においておく必要がある。

ただ、燃料棒の破損=外部への放射性物質(燃えカス)ばらまき、
と、単純に言い切ることはできない。
そのへんは次回。


原発を理解する 第5回【対放射性燃えカス安全構造】
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2011/03/19 22:48
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原発を理解する 第3回【原発での実装】

3月19日(土) ■ 原発を理解する 第3回【原発での実装】 ■
前回まではどうやってエネルギーを生み出すかについて、
その基礎メカニズムについて書いた。
今回は前回までの理論をもとに、
具体的にどんな仕組みで理論が原発に実装されいるのかを書いていく。

まず燃料。
コイツには低濃縮のウラン235を使っている。
これを酸化ウランという粉末状にして焼き固めて小さな錠剤状の塊にする。
そしてこの錠剤を直径1センチ、長さ4メートル程度の細い棒状のケースに詰めていく。
これがテレビで燃料棒と呼ばれているもの。
さらにこの細い燃料棒は1センチ間隔くらいの密度で約200本束ねられ、
燃料集合体というものを構成している。
この燃料集合体100-200体がぎっしりと集められ、炉心を構成する。

燃料棒1本1本の間には秒速3メートルの水が流れており、
冷却材であり、発電蒸気のもとであり、中性子速度抑制剤になる。
この水の速度が速いため燃料棒の表面は300℃ほどになっているが、
棒の中心部は2000℃を越す高温になっているらしい。
この過程で冷却水の一部は蒸気となり、
これが発電タービンを回して発電するというわけ。

ちなみにこの冷却水を一次冷却水という。
燃料棒のケースから放射性の燃えカスがもれてしまうため、
この水は放射性物質で汚染されている。
原発がらみのニュースで一次冷却水が漏れたと大騒ぎすることがあるが、
大騒ぎの理由は以上の理由から。
今回の事故でも一番最初に格納容器(詳しくはあとで説明)の圧力を下げるために放出した水蒸気がコイツで、
それがために周囲の放射線量が上昇したのはこのせい。

これに先述した中性子吸着物質からなる制御棒が加われば、
だいたい完成。
他にもいろいろな仕組みがあるが今回の事故にはあまり関係ないので省く。


第4回【燃料棒のケースと水素爆発】
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2011/03/18 0:53
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